「AI 2027」から考える、住宅業界のこれから

「数年後には、AIがほとんどの知的な仕事をこなすようになる」。そんな未来を具体的に描いた「AI 2027」というシナリオが、2025年4月に公開され、世界中で話題になりました。

極端な話に聞こえるかもしれません。それでも、工務店・ビルダーの経営者が「これから数年で何が変わるのか」を考えるきっかけとしては、とても良い材料です。第2回は、このシナリオを手がかりに、住宅業界のこれからと、いま打っておきたい手を考えます。

「AI 2027」とは

AIの進化のイメージ

「AI 2027」は、アメリカの非営利団体 AI Futures Project が公開した、AIの未来についてのシナリオです。元OpenAIの研究者ダニエル・ココタジロ氏らが中心になって書きました。

描かれているのは、次のような流れです。

  • AIが「質問に答える道具」から、指示を受けて仕事を最後までこなす「エージェント」へと変わっていく
  • 2027年ごろには、AIがAI自身の研究開発を進めるようになり、進歩が一気に加速する
  • その結果、多くの知的な仕事が自動化され、経済や国際関係にも大きな影響が出る

大切なのは、これが「予言」ではなく「ありうる未来の一つ」として書かれていることです。時期が当たるかどうかは、専門家の間でも意見が分かれています。

ただ、時期がずれたとしても、向かっている方向はすでに見えています。AIが「調べもの・下書きの相手」から「仕事を任せられる相手」に変わりつつある、という方向です。

住宅業界で、変わること

工務店の仕事に当てはめると、変化が大きいのは「パソコンの前でする仕事」です。

  • 書類と事務:見積書・契約書類のチェック、申請書類の下準備、議事録や日報のまとめ。決まった形の書類ほど、AIに任せられる範囲が広がります。
  • 提案づくり:間取りの説明文、内観のイメージ、提案書のたたき台。打ち合わせの前日に担当者が夜遅くまで作っていたものが、短い時間で揃うようになります。
  • お客様対応:問い合わせへの一次回答や、見学会後のフォロー文。「すぐに・丁寧に」返すことが、規模の小さい会社でもできるようになります。

こうした仕事は、お客様から見ると「対応が早い」「提案がわかりやすい」という差になって表れます。AIを使う会社と使わない会社の差は、ここから開いていきます。

変わらないこと

住宅の施工現場

一方で、住宅づくりには、AIが進んでも置き換わりにくい部分がはっきりあります。

  • 現場の施工:土地ごとに条件が違い、職人の手で一棟ずつ建てる仕事です。
  • お客様との信頼:家づくりは、人生でいちばん大きな買い物の一つです。最後に「この人に任せたい」と決めるのは、人と人との関係です。
  • 地域とのつながり:土地の情報、協力業者、引き渡し後のお付き合い。地元で積み上げてきたものは、AIには真似できません。

つまり、AIで「パソコンの前の時間」を減らし、空いた時間を「お客様と現場」に回せる会社が強くなる、というのが住宅業界のこれからの姿です。

「使う側」と「使われる側」の差

AIの進歩が速いほど、早く触り始めた会社とそうでない会社の差は大きくなります。AIの使い方は、使った分だけ社内に「うまくいく指示の出し方」がたまっていくからです。

逆に、何もしないでいると、AIを使いこなす競合に「対応の早さ」と「提案の質」で差をつけられていきます。私たちが勉強会のタイトルを「AIを使う側に回る一日」としたのは、この差を早いうちに埋めてほしいと考えたからです。

いま打っておきたい3つの手

社内での打ち合わせ
  1. 経営者・幹部が自分で触る:任せる前に、まず自分で1週間使ってみます。何ができて何ができないかの感覚が、社内での判断の土台になります。
  2. 「任せる仕事」を1つ決める:第1回で紹介した10の活用例から、毎日時間がかかっている仕事を1つ選び、そこから始めます。
  3. 使い方のルールと共有の場をつくる:個人情報を入れない、最後は人が確かめる、といった最低限のルールを決め、うまくいった指示文を社内で共有します。

まとめ

内容
変わること書類・事務、提案づくり、お客様への一次対応など「パソコンの前の仕事」
変わらないこと現場の施工、お客様との信頼、地域とのつながり
いま打つ手幹部が自分で触る / 任せる仕事を1つ決める / ルールと共有の場をつくる

「AI 2027」の時期が当たるかどうかより大切なのは、変化の方向を知ったうえで、自社が先に動けるかどうかです。小さく始めて、空いた時間をお客様と現場に回していきましょう。

次回(10/19)は、人手不足にAIでどう向き合うか、採用と育成の場面から考えます。

勉強会の様子を動画で公開しています

この記事の内容は、加盟店様向け勉強会「AIを使う側に回る一日」の冒頭でお話ししたテーマです。その様子を「JIHの取り組み」ページで公開しています。

→ JIHの取り組みを見る

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